命令的行為と形成的行為

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    行政行為は、「法律行為的行政行為」と「準法律行為的行政行為」に分類される。

    そして、法律行為的行政行為は「命令的行為」と「形成的行為」に分類される。

    そして、「命令的行為」と「形成的行為」は

    命令的行為=下命・禁止・許可・免除 

    形成的行為=特許・剥権・認可・代理

    とに分類される。


    そして、準法律的行政行為=確認・通知・公証・受理

    に分類される。


    法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為の分類は、行政行為者側からみた見地であり、行政庁側の意思表示でどれだけ国民に法的効果が生じるかという違いです。

    詳しくは、こちらのページで説明しています。⇒ 行政行為の分類 / 行政裁量

    「命令的行為」
    命令的行為とは、国民が本来持っている自由を制限する又は、解除する行為。


    「下命」とは国民に作為を命じる行為で、特に不作為を命じる行為が「禁止」といいます。

    例えば、違反建築物に対する措置を命ずる行為は、命令的行為の「下命」にあたります。

    根拠となる法律 建築基準法

    建築基準法 第9条(違反建築物に対する措置)
    特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は・・・・使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。


    そして、道路の通行禁止は、命令的行為の「禁止」にあたります。

    根拠となる法律 道路交通法

    道路交通法 第6条
    4 警察官は、道路の損壊、火災の発生その他の事情により道路において交通の危険が生ずるおそれがある場合において、当該道路における危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、必要な限度において、当該道路につき、一時、歩行者又は車両等の通行を禁止し、又は制限することができる。

    このように、行政行為者側(警察官)の意思表示により、法的効果が発生し、国民が本来自由に通行していい道路を、危険防止による緊急の必要であると認めた警察官の必要な限度の裁量で禁止したり制限する行為が、命令的行為の「禁止」ということになります。


    その他の、命令的行為である「許可」「免除」でも、根拠となる法律があります。

    「許可」とは、一般の禁止を特定の場合に解除して、一定の行為を付与する。

    「許可」にあてはまる行為は、各種商売の営業許可等がそうです。各商売の営業に対する許可の条文があります。

    根拠となる法律 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

    (営業の許可)第3条 風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
    2 公安委員会は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、前項の許可に条件を付し、及びこれを変更することができる。

    国民の営業は本来自由な行為ですが、勝手な営業を認めてしまうと金儲け主義から経費を削減して、不衛生な施設による営業をして、国民の健康を害する恐れがありますので、法律の根拠に基づいて一定の裁量内で行政庁が判断し、この人なら営業させても大丈夫だろうと、一般的に禁止している営業を解除して、必要な限度で条件等の附款を付し「許可」を出す事ができます。


    「免除」とは、特定の場合に、作為・給付・受任義務を解除する行為です。

    「免除」の根拠となる法律には、国税通則法 46条(納税の猶予)等があります。

    国税通則法 第46条(納税の猶予の要件等)
    税務署長等は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において・・・・その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。




    「形成的行為」

    形成的行為とは、国民が本来持っていない特別な権利や地位を設定・剥奪・変更する行為。

    「特許」とは、特別な権利や能力を設定する行為です。

    鉱業法 鉱業権の設定
    鉱業権は、国が賦与する(第2条)ことによって発生するが、その手続きとしては、鉱業権の設定を受けようとする者が、経済産業局長に対し鉱業権設定の出願をし、その許可を受け、これを登録することによって発生します(鉱業法 第21条第1項、第59条、第60条)。なお、出願の手続きについては鉱業法施行規則において定められています。

    河川法 (河川占用許可)
    (流水・土地占用の許可)
    第23条 河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
    第24条 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権原に基づき管理する土地を除く)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。

    (流水占用料等の徴収等)
    第32条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内に存する河川について第23条から第25条までの許可を受けた者から、流水占用料、土地占用料又は土石採取料その他の河川産出物採取料(流水占用料等)を徴収することができる。

    このように、国民の財産である貴重な埋蔵物の採掘は、本来国民の持っていない権利です。埋蔵量にも限界があるので誰でも彼でもできることにすると国民にとっても不利益になりかねません。そこで国がその権利を管理し、特別に許可した者だけにその権利や能力を、設定する行為が「特許」にあたります。

    又、鉱業権の設定、河川占用許可は条文上では許可ですが、行政行為上は特別な許可「特許」にあたり、租鉱料の徴収や流水占用料の徴収は附款でいう「負担」にあたります。


    「剥権」とは、「特許」と正反対の法的効果を持つもので、特定の権利や能力の剥奪。法律関係を解消せしめる行為がこれにあたります。

    公務員の免職処分等は「剥権」にあたります。その逆に公務員の任命は「特許」にあたります。

    地方公務員法 
    第6条 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長(特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員の任命、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。

    地方公務員法によると、地方公共団体の長等の任命権者である行政庁は、根拠となる法律並びに条例、規則等に従い特別な権利である公務員を任命(特許)することも、根拠となる法律並びに条例、規則等に従い免職(剥権)することもできる権限を持っているとなっています。


    「認可」とは、第三者の契約等に介入して、その法律上の効果を完成させる行為をいいます。

    この「認可」は、行政庁の意思表示により私人の行為が適法におこなわれるという意味では、「許可」や「特許」と共通する性質を持っていますが、「認可」はまず私人相互の間で法律行為がすでに行われている事が前提となります。

    その私人相互間で、すでにおこなわれている法律行為を補充して、法的効果を完成させるとういうところに特徴があります。

    代表的なのは、農地の権利移転の許可等があります。

    農地法
    第3条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可(これらの権利を取得する者(政令で定める者を除く。)がその住所のある市町村の区域の外にある農地又は採草放牧地について権利を取得する場合その他政令で定める場合には、都道府県知事の許可)を受けなければならない。

    この農地法は、農業生産の基盤である農地は国民のための限られた貴重な資源であるから、農地を農地以外のものにすることを規制すること、農地の権利の取得を促進、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国民に対する食料の安定供給の確保を目的とする。とされ、

    このことから、農地の権利移転は、勝手にはできず、所有権者と取得する者との間に介入して、この者には農地を移転させても国民の不利益にはならず、安定した食料供給がされるだろうと判断して、農業委員会又は都道府県知事が認めることで権利移転が可能になり、法的効果が完成することになります。


    「代理」とは、第三者がなすべき行為を国が代わって行うこと。それにより第三者がしたのと同じ効果が生まれる行為。

    本来なら、行政庁の行った行為は、行政庁に帰属するのだが、代理の場合は行政庁が行った行政行為は、別の主体に帰属される。

    土地収用法(収用又は使用の裁決)
    第47条の2 収用委員会は、前条の規定によつて申請を却下する場合を除くの外、収用又は使用の裁決をしなければならない。
    2 収用又は使用の裁決は、権利取得裁決及び明渡裁決とする。
    3 明渡裁決は、起業者、土地所有者又は関係人の申立てをまつてするものとする。
    4 明渡裁決は、権利取得裁決とあわせて、又は権利取得裁決のあった後に行なう。ただし、明渡裁決のため必要な審理を権利取得裁決前に行なうことを妨げない。

    この収用委員会の裁決により、法的効果は起業者、土地の所有者に帰属される。


    まとめ

    これらの行政行為である「命令的行為」「形式的行為」には、法律による行政の原理に基づいて根拠となる法律が必ずあります。それは、準法律行為的行政行為も同じです。

    そもそもこの分類は、行政法学者が沢山ある法律の中で行政行為を理論的に分類したにすぎず、いうなれば後付け的なものです。今後、さらに学者がこの部分はおかしいと思い修正され、他の人たちもそれに賛同すれば、この分類も変更されることだってあるだろうし、更に法律改正や制定によりこの分類は必要ないと思われるかもしれません。

    現に、Wikipediaで行政行為を調べたって、「代理」の分類は不要であって特許の一部として考えれば良いという見解もある。と書かれてるくらいだし、ある学者が書いた行政法入門の本には、準法律的行政行為自体あまり重要視されていませんでした。

    しかし、行政法を勉強する上で「行政行為」の意味であるこの分類をきちんと把握することとしないことの差は、今後の行政手続法や行政救済法等の勉強する上での理解度に差がでるのではと思います。

    なぜなら、この分類こそがこの複雑な行政行為全体をわかりやすくしてくれているからです。

    「命令的行為」と「形成的行為」の大きく違うところは、例えば「許可」の場合、無許可で営業している八百屋さんがあったとして、その八百屋さんから野菜を買ってしまったお客さんに対する契約という法的効果はどうなるのか?

    無許可の者から買ったのだから、買った野菜は無効だからといって返品する義務は発生しません。売買契約は有効に成立します。

    そして、八百屋さんには、無許可営業による罰則が科せられることになります。

    道路交通法にしても、この道路のこの部分からはUターン禁止(命令的行為の「禁止」)ですというルールを破ると、Uターンしたところに戻りなさいということはなく、罰則を科せられます。

    それでは「形成的行為」についてはどうか、例えば「認可」の場合、代表的なのが農地の権利移転です。農業委員会又は都道府県知事の許可を受けないでした契約は、無効となります。私人間で契約を交わしたからといって「許可」のように契約自体は有効に成立することにはなりません。

    今度は、営業を「許可」した行政庁側からみた場合、先に「許可」を受けた者が、お店を出して営業をしていたところに、後に同じ場所で営業の「許可」を受けた者がいて、その場所で営業を始めてしまった場合。

    困った先に「許可」を受けた者が、「許可」を出した行政庁に対して提起することができるのか?

    それは、できません。行政庁は、法律の根拠に基づき、罰則にあてはまらないことを判断し「許可」を出したにすぎないからです。あとは私人間での民事上の問題になります。

    しかし、形成的行為の「特許」の場合はどうか?

    「特許」の場合は、特別な権利の設定ですので、私人に排他的・独占的権利を与えるという事であり、あとから同じ「特許」を受けた者の出現や、同じ内容の「特許」をした行政庁に対抗することができ、重複特許をした行政庁を相手に提起することが可能です。

    これらが、「命令的行為」と「形成的行為」の特徴のちがいです。

    しかし、先にも述べたようにこれらの分類はあくまでも一定の法的効果を行政行為にあてはめてわかりやすく分類したに過ぎず、すべてがこの通りにおさまるわけではありません。

    例えば、農地の権利移転や土地収用法は「形成的行為」であると言っても、農地の権利移転の認可を受けないで行った行為に対して罰則が設けられているので「許可」としての性質もあると思われます。

    行政行為を、簡単に理解するのは、とても難しいことですが、行政行為には法律による行政の原理により根拠となる法律が必ず必要となりますので、その法律の中には必ず法律行為的行政行為の「命令的行為」と「形成的行為」・準法律行為的行政行為があることにはまちがいはありません。

    ただし、あくまでも「行政行為」自体が、学者が理論的に考え出した概念にすぎないということは頭に入れておかなければなりません。法律の中に「行政行為」という用語を使っている条文は存在しませんし「行政法」という法律自体存在しません。

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